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IT活用先進事例

IT活用先進事例「井上誠耕園  一般消費者に直接売る、そうしないと利益が出ない」

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一般消費者に直接売る、そうしないと利益が出ない
『有限会社井上誠耕園(香川県小豆郡小豆島町)』
代表取締役社長 井上智博 氏
平成25年1月21日 於:同社(農業経営者育成会から)

1.“仲買人”体験

20歳の時、故郷「小豆島」を離れ神戸にある「仲買人の会社」に就職した。市場には小豆島産みかんも運ばれ仲買人の手を経て果物屋に並ぶ。市場では非常に安値で取引され、小売(果物屋)段階ではそれなりの値段で販売されていく。卸、小売、共にしっかりと利益を上げる仕組みがあった。敢えて言えば、商品を“右から左に”動かすだけの仕組みであるにもかかわらずだ。一方、農家は一年かけ汗水を流して「みかん」を手塩にかけ育てる、しかし、なかなか儲からない。ひどい年になると追い金が必要になる事もある。「この差は一体なんだろう」と痛感した。

2.自分で売る

神戸で6年勤め小豆島に戻る。実家はみかん農家だ。「これからの農家は自分で値段をつけ自分で売る術を持たないといけない」。神戸の経験から得た大きな教訓だった。でも、どこから取り掛かって行ったらいいか分からず、考えられるところから行動していくしかなかった。
自分で売る術も分からない。
近くに、小豆島の四国霊場八十八寺、42番霊場「西の瀧」がある。よくお遍路さんがお参りにこられる。みかんを持ち込み販売したり、みかんを「ネット」に入れ小分けして販売したり試行錯誤が続く。ある時には、軽トラを船に乗せ姫路や加古川などに渡り、アパートとかマンションのドアを叩きながら売った。
自分で売るということを少なからず経験する時期が続いた。

3.通信販売

実家近くに遍路宿がある。その宿のお風呂がたまたま壊れ修繕が必要となった時期があった。
頼まれ、お遍路さんに自宅のお風呂を貸すこととなった。夜になると宿泊されるお遍路さんがお風呂を借りに来られる。
風呂上がりにみかんをお遍路さんに差し上げたりしていた。その接待の心に触れたのかもしれないが、後日御礼状がきたりした。
その際、「もしよかったら「みかん」を送ってもらえないだろうか」ということもあった。
お遍路さんがご近所にも口伝えで広がっていった。
 
12月のお歳暮の時期、母親が自宅で宅配便の送り状を整理する姿を見て、経緯を聞くとそんなことだった。「もったいないな」と思うと同時にワープロでデータベースに整理したら280件も顧客情報があった。
翌年11月頃、みかんができる少し前、280人の方々に手紙を書いて送ったらその年も多くの方から申し込みをいただいた。加えて、「親戚や息子のところにも送って欲しい」といった反応があった。
「通信販売」という言葉すら知らなかったが、後に「通信販売」という売り方だということを知る。
 

4.リピート通販

「みかん」でつながった顧客の方々に、オリーブ製品も少しずつご案内し始めた。その頃、コンサルタントのような専門家との出会いにも恵まれた。専門家から「君のやっていることはリピート通販というんですよ」と初めて教えられた。その仕組みを体系的に教えてもらう。九州にリピート通販の成功事例が沢山あるということも教えてもらって毎月九州に勉強しにいった。
そういうことで現在があるということだ。

5.みかんジュース

みかん農家だがジュースにはしなかった。手間がかかり儲からないからだ。しかし、それにも挑戦してみた。両親からも反対され、周囲からも反対された。「ばかげたことはやめなさい」と。
そんなこと云われても先が見えない、考えられることを行動に移してみるしかなかった。
当時はみかんをジュースにするには手押しで一個ごとに押しつぶしてジュースにするしかなかった。みかんを“絞って”“絞って”それでジュースをつくり行商してみる、そんなこともやった。
幸いなことに父親の時代からお土産屋さんのルートがあったから一般のお客さんにはそのルートを活かすことができた。また、小豆島の宿においてもらえることになった。しかし、お土産屋さんルートは考えてみれば、結局は「卸」の販売スタイル。自分で値段を決め自分で売るということになってない。

6.直接消費者に売る

結局、卸をするというのは消費者に売る売価を決められないということ。日本の社会だけではないか、商売とは「売る人」の方が強い。売る難しさがあるからだろう。卸のところで値段をどうしても叩かれてしまう。(みかんジュースを例に話しをするが)どうにかして直接お客さんに販売したい。そうしないと利益が取れないのが農業の実態だ。そういうふうにしてやってきたのが現実だ。
販売力を是非つくっていってもらいたい。なかには“いい卸”というのもあろうが結局は「卸」であって、一番の目指すところは自分で値段をつけ自分で直接一般消費者に買っていただく、目指す方向はそういうことだ。

7.生鮮から加工へ

まずは「生鮮もの」からやってみたらいい。お客さんが付いたら、その次には、その産品で「こんな加工もしてみたんです」というふうにしてお客さんにつないでいく。発展していけばいいなと思う。

8.公的試験研究機関をうまく活用しよう

みかんをまるごとジャムにする商品開発もした。その際、香川県の発酵食品試験場に持ち込んで商品開発に対する思いを一生懸命に語った。みかんの皮に栄養素が沢山含まれている。データ(エビデンス)も取ってくれた。無料だ。中小企業にとっては本当に助かる機関だ。
健康データはしっかり持つことも大事だがコストがかかってしまう。国や県のそういった機関をうまく活用することも必要なことだ。
「なんでこんなに美味しいのに買ってくれないのか」といった泣き言はいわないで一生懸命やる、そのことが人を動かし活路を切り開くことに通じる。

9.一生懸命

日本の国というのはありがたい。いろんな機関があって、そこには優秀な人が居て助けてくれる仕組みがある。情熱もって語れば助けてくれる。
20歳で神戸の卸市場で働くようになったが、初日にその会社の創業者から「きみか小豆島からきた井上君か」「いいか、目の前の仕事を一生懸命するんだぞ」「「しょうもない仕事か」とかそんなことは思ったらいかん、人は「その一生懸命さ」を見ている「その結果、何でもしてくれようになる」という言葉をもらった。社会人の第一歩だった。それをこれまでの人生、肝に銘じて守ってきたつもりだ。一生懸命に仕事していたら、その姿を見て人が不思議と「あれしてみたらどうか」「これしてみたらどうか」とアドバイスしてくれるようになった。
農業には素晴らしい可能性がある。国は、農商工連携や農業の6次産業化を進めている。新しいビジネススタイルがあるはずだ。人を巻き込みもっともっと沢山新しい農業のスタイルを考えていきたい。
 
以 上

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